ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

遺産が六十万円しかなくても相続分を巡る争いは起きる / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり

遺言書というと「土地や財産をたくさん持っている人が書くもの」というイメージを持っている方が多いと思います。
自分の財産といえば、持ち家と貯金。持ち家は長男夫婦が受け継ぐことになっているし、貯金は老後の生活で消費してほとんどないから、わざわざ、遺言書を残す必要はない。
そう考える方が意外に多いものです。

ただ、残された遺族も同じように考えるというと、必ずしもそうではありません。
誰しも、自分の取り分は多くもらいたいと考えるもの。

数十万程度しか、貯金が残っていないような場合でも、子供たちの間でもめることはよくあるのです。

母親が亡くなり、その遺産が六十万円。相続人は長女、長男、次男が三人だけ。
という場合、遺言書がなければ、法定相続分に従って、三人で二十万円ずつ分け合うことになります。

このような場合でも、もめごとは起きるのです。

例えば、亡くなった親の介護を一手に引き受けた長女にとってみれば、親の面倒を見ないのに、法定相続分はきっちりともらって行こうとする長男、次男は身勝手だと思うでしょう。

長女、次男にしてみれば、長男が父親の持ち家も車も相続しているのに、母親からも法定相続分をもらおうとするのは欲ばりだと考えるかもしれません。

また、次男だけは医学部に進んだために、飛び抜けて高い学費を支払ってもらったのに、法定相続分ももらおうとするのは、欲ばりだと考えるかもしれません。

海外に住んでいる次男にしてみれば、高い旅費を負担して駆けつけたのだから、その分、多めに遺産をもらいたいと考えているかもしれません。

このような思惑がぶつかり合えば、もめごとが起きることは想像に難くないと思います。わずか六十万円のために、兄弟間の仲を裂いてしまうというのは何ともやりきれないものです。

そんな時、もめごとを回避するのに有効なのが、遺言書です。

意識がはっきりしているうちに、合理的な理由付けをして遺産の分け方を指定しておくのです。

上記に挙げた事例であれば、

長男は、父親から持ち家と車を相続しているから、私の相続の時は相続分はなし。
次男には、医学部に進ませるために、学費を出したのだから、やはり、相続分はなし。
長女は、私の介護を一手に引き受けてくれたので、全財産を相続させる。

というような遺言書を書くのが望ましいかもしれません。
ただ、その場合、長男や次男にしてみれば、不満が残るでしょう。
もしかしたら、母親の遺言書は無効だと主張してくるかもしれません。
とりわけ、母親が病床に着いてから入院先で書いたような遺言書だと、「正常な判断能力で書いた物ではないので無効だ」と主張することがよくあります。
そうなっては、せっかく書いた遺言書までもが、もめごとの元となってしまい本末転倒です。

そのようなことにならないようにするために、「遺言書は元気なうちに書いておく」ということが大切です。



※参考条文

民法
法定相続分

第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。


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