ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

寄与分とは / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり

寄与分とは、特定の法定相続人が被相続人の生存時に被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合、その貢献の程度に相当する金額を相続分に加算することができるという制度です。

遺言書がなく、遺産分割協議がまとまらずに、家庭裁判所での調停となった場合、相続人の間で寄与分がどの程度あったのかが問題になりがちです。

また、遺言書が残されていた場合でも、自分の寄与分が考慮されていないということで、特定の相続人が不満を抱くということもあります。

ですから、遺言書作成に際しては、寄与分を考慮することが肝要です。

とはいえ、遺言者自身が客観的に寄与分がどの程度なのかを判断するのは難しいものです。専門家の助言を仰ぐようにしたいものです。



寄与分とはどの程度の貢献を差すのか?

寄与分がどのような場合に認められるかは非常に難しい問題です。

民法の条文では、「特別の寄与をした」という表現になっている通り、同居の家族として当たり前のことをしていたという程度では、寄与分として認められません。

一般的には、以下のような場合、寄与分が認められる可能性があります。

・仕事を辞めて、あるいは、自腹を切って、親の介護を率先してやっていた。

・親に代わって、家業を仕切り、家業を維持、成長させた。

・親の生活費などをすべて出していた。



特に問題となるのが、介護です。

介護をしていたから自動的に、寄与分が認められるのかというとそんなことはありません。

「特別の寄与をした」と言うに足るだけのことをしてきたのか。ということが問題になるわけです。

例えば、

・亡くなった親と同居していて、毎日、デイサービスに送り出していた。デイサービスを利用しない日は、家で面倒を見ていた。デイサービスの費用は、親の年金で賄っていた。

・亡くなった親が倒れてから、毎日、病院にお見舞いに行き、自宅療養となってからも通院の付き添いをしていた。費用は親の年金で賄っていた。

このような場合は、「同居の家族として当然のことをしただけ」とみなされて、寄与分として認められないことが多いです。

「特別の寄与をした」と認められるためには、一般的には、「介護費用や入院の費用を親に代わって子供が負担していた」というような、財産的な貢献をしていることを要します。

そして、その費用をどれだけ負担していたのかという点については、資料を基にして計算しなければならないので、「領収証」などの明確な数字が分かる文書を用意することが求められます。

デイサービスなども利用しないで自宅で介護するという方もいると思います。

そのような場合は、具体的な数字で表すことが非常に困難です。

親の家に同居している場合は、それにより、介護する子供が家賃相当分の費用を免れているのですから、その対価として介護するのが当然とみなされて、寄与分として認められないということもあります。

家業の場合も、寄与分として認められるには、「特別の寄与をした」ことを要します。

単に従業員として家業に従事していたという程度では、その対価は報酬として受け取っているのですから、寄与分とはなりません。

倒れた親に代わって、無報酬で経営を代行していた場合に、「特別の寄与をした」と認められるのです。



※参考条文 民法

寄与分

第九百四条の二  共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2  前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3  寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4  第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。


※(法定相続分
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

代襲相続人の相続分)
第九百一条  第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2  前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

(遺言による相続分の指定)
第九百二条  被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2  被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。



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