遺言書が却ってトラブルを招いてしまう / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり
遺言書を作ったのに、その遺言書が却ってトラブルを招いてしまうということがあります。
自筆証書遺言と言う形式の遺言書の場合は、よりトラブルになりやすいものです。
よくある例をまとめておきます。
1、パソコンやワープロで作成している。
きれいな字が書けないからということで、パソコンやワープロで遺言書を作成する方もいます。
今時、どんな文書もパソコンで作るのが当たり前ですから、遺言書もパソコンでいいだろうと考える方もいるかもしれません。
しかし、民法では、自筆証書遺言は、全文を手書きで書かなければ、無効とされているのです。
間違いなく本人の意志であることを確認するためです。
古臭い考え方かもしれませんが、パソコンならば、偽造も容易なので仕方がありません。
また、本文はパソコンで作成して、署名と作成日付を自筆で書けばいいのではないかと考える方もいるかもしれません。
契約書などではそれでも有効ですが、遺言書の場合は、やはり、無効です。
2、作成した日付、署名、印がない。
自筆証書遺言では、本文の他、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 とされています。
日付、署名、印の三つのいずれか一つでも欠いていたら自筆証書遺言としては無効になってしまうのです。
日付を書いても、年がなくて、「月日だけ」だと、いつ作成したのかが分からないので、無効ですし、「吉日」とぼかしていたらやはり、はっきりとした作成日付が分からないので無効になってしまいます。
「大晦日」「元旦」というように月日を特定できる場合は大丈夫ですが、できれば、数字で書く方が望ましいです。
3、訂正方法を間違えている。
自筆証書遺言を作成したけど、文字を間違えたので修正液を遣って消し、上書きした。
このような場合は、他の要件が満たされていたとしても、遺言書は無効となってしまいます。
遺言書の文言を変えるときは、元の文字が読めるように斜線を二本引く程度にとどめる必要があります。
その上で、印を押して、「何文字訂正」「何文字削除、何文字追加」というふうに、訂正した過程が分かるように明記する必要があります。
また、遺言書はボールペンでなくても、鉛筆で書くことも可能です。ただ、消しゴムで消した跡がある場合は、無効と判断されやすいと考えてください。
4、病院で遺言書を作成した
遺言書を作成する場所は、何処でも構いません。自分の家で書こうが、他の人の家、遺言書に関するセミナー会場で書いても構いません。
もちろん、病院のベッドで書いてもかまわないわけです。
また、遺言書を作成する時期も、十五歳を過ぎていれば、生きている限り、いつでも構いません。
命が燃え尽きる間際までボールペンを動かして、遺言書を認めて、年月日と署名を書き、印を押したところで絶命してしまったとしても、形式が整っていれば有効な遺言書となります。
ただ、死の間際に作成された遺言書は、その人が正常な判断能力の元、遺言書を作成したのかどうか、疑わしいと判断されてしまうこともあります。
遺言書の内容を巡ってトラブルになり、遺言書に不満を持つ人がいる場合は、なおさらです。
5、文書以外の形での遺言
現状、民法で認められている遺言方法は、遺言書と言う文書の形式だけです。
文書以外の形。例えば、録音だとかビデオカメラという形式での遺言は認められていません。
これも、偽造が容易であるためです。
では、障害や病気のために目が見えなかったり、手が動かない場合はどうしたらいいのか?
そのような場合は、公正証書遺言という形式で作成することができます。
第三者である公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させることで作成する遺言書です。
口述もできないという場合でも、通訳人を介することで公正証書遺言を作成できます。
※参考条文 民法
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
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