ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

遺言によって認知しても子供が傷つくだけ / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり

昔、別れた恋人の子供が自分の子供だと知っている。

だけど、彼女とは結婚しなかったから、子供との戸籍上の繋がりはない。

子供は今どうしているのだろう。どうしても気がかりでならない……。

今になって、急に子供のことが気になり始めた。

子供の面倒を全く見なかったことを後悔している。

子供の成長を見守れなかったことを悔やんでいる。

せめて、自分の遺産の一部を子供に譲りたい。

でも……、今まで、ずっと会っていなかったのに、いきなり、父親は私だと名乗り出たところで子供が受け入れるだろうか?

自分から、名乗り出す勇気はない。でも、黙っていることはできない……。


母親と子供の関係は、出産によって当然に、生じます。子供を産んだ後で、置き去りにしたとか、赤ちゃんポストに預けたというのでない限り、戸籍には、母親の名前がしっかり刻まれることになります。

一方、父親との関係は、当然に生じるとは限りません。

法律上当然に、父子関係が認められるのは、父親と母親が結婚している場合だけです。


民法
(嫡出の推定)
第七百七十二条  妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。


婚姻関係にない女性との間に子供ができてしまった場合は、父親が認知しない限り、嫡出の推定を受けることはありません。そんな子供の父親は自分だと宣言することを認知と言います。


民法
(認知)
第七百七十九条  嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。


一般的には、市区町村役場に出向いて、認知届を行うことによって、その旨の宣言をするわけです。


(認知の方式)
第七百八十一条  認知は、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによってする。
2  認知は、遺言によっても、することができる。


この認知をしない限り、自分の子供だと、知っていたとしても、父子関係が生じることはありませんし、子供があなたの相続人になることもできません。

面と向かって、自分の子供だと言い出すことはできないけど、何か書き残したい。

そんな時は、遺言を使うのも一つの手です。つまり、遺言書に、彼女が産んだ子供は、私の子供だから認知すると書いておくのです。

ただ、遺言によって認知する場合は、記載事項が戸籍法に則ったものでなければなりません。

遺言書の文言としては、


遺言書

次の者は遺言者と(母親の氏名、住所、本籍)の間の子であるから、遺言者はこれを認知する。
子供の本籍、筆頭者、氏名
(以下略)


このような文章で、構いません。

しかし、遺言書に記載する形で一方的に宣言しても、認知が認められるとは限りません。
本来、認知は単独行為で、子供や母親の承諾を得る必要はありませんが、承諾が必要な場合もあるです。

例えば、子供が既に成年に達している場合は、認知をするには、子供の承諾を得なければなりません。父子関係を生じさせるかどうかの選択肢が子供に委ねられているわけです。


(成年の子の認知)
第七百八十二条  成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。


逆に、認知する子が未だ、生まれていない場合は母親の承諾を得なければならないとされています。


(胎児又は死亡した子の認知)
第七百八十三条  父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
2  父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。


仮に、子供が亡くなっている場合でも、子供に子がいれば――あなたから見れば孫がいれば――、認知することができ、父子関係はもちろん、祖父と孫の関係を生じさせることもできます。孫が成年に達している場合は、孫の承諾が必要です。

もしも、あなたが老年に達しているのであれば、子供が成年に達している事もあると思います。

今まで、無縁だったのに、いきなり、私が父親だと名乗り出られたところで、子供が受け入れられるでしょうか?

形式的な紙切れ一枚を渡されただけで、「はい。そうですか」と受け入れられる人は少ないと思います。

遺産を譲りたいと言われたところで、戸惑うばかりでしょう。

それに、あなたの今の家族は、いい顔をするはずがありません。

遺産が見ず知らずの人間に取られるわ。隠し子が発覚するわで、踏んだり蹴ったりです。

「こんな子供がいたなんて!一体、あんた何者なのよ!」

と、その恨みを子供に対して向けるであろうことは想像に難くありません。

すると、訳も分からないままに、子供が傷つくだけで、たとえ、遺産を譲られたところで、あなたに対して、「お父さん」と呼びかけようとする気持ちが湧くことはないのではないでしょうか。

遺言書一枚で、子供にあなたの寸志を伝えることは、できません。今の家族も納得しません。

遺言書ではなく、子供や今の家族への手紙を添える――附言事項(付帯事項)――によって、気持ちを伝えることも不可能ではありませんが、よほど、気持ちのこもったものでなければ、伝わりません。

あの子に「お父さん」と呼ばれたい。
今の家族にも、あの子のことを受け入れてやってほしい。

そう考えているのであれば、やはり、生前に自ら、告白するのが一番です。


※戸籍法

第三節 認知

第六十条  認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一  父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二  死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍

第六十一条  胎内に在る子を認知する場合には、届書にその旨、母の氏名及び本籍を記載し、母の本籍地でこれを届け出なければならない。

第六十二条  民法第七百八十九条第二項 の規定によつて嫡出子となるべき者について、父母が嫡出子出生の届出をしたときは、その届出は、認知の届出の効力を有する。

第六十三条  認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
○2  訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。

第六十四条  遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十条又は第六十一条の規定に従つて、その届出をしなければならない。

第六十五条  認知された胎児が死体で生まれたときは、出生届出義務者は、その事実を知つた日から十四日以内に、認知の届出地で、その旨を届け出なければならない。但し、遺言執行者が前条の届出をした場合には、遺言執行者が、その届出をしなければならない。

民法

(準正)
第七百八十九条  父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
2  婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
3  前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。



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