ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

民法1-2 私権の主体 2006年問27 / 行政書士試験の勉強は、開業の準備をしてから始めよう

制限行為能力者と取引した相手方の保護に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1、制限行為能力者が自己の行為を取り消したときには、相手方は、受け取った物を返還しなければならないが、相手方は、制限行為能力を理由とする取り消しであることを理由に、現に利益を受けている限度において、返還すれば足りる。
2、制限行為能力者が未成年者の場合、相手方は、未成年者本人に対して、1か月以上の期間を定めて、その行為を追認するかどうかを催告することができ、その期間内に確答がなければ、その行為を追認したものとみなされる。
3、制限行為能力者成年被後見人であり、相手方が成年被後見人に日用品を売却した場合でも、成年被後見人は、制限行為能力を理由として、自己の行為の取り消しをすることができる。
4、制限行為能力者被保佐人であり、保佐人の同意を得なければならない行為を被保佐人が保佐人の同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにした場合において、被保佐人が相手方に対して行為能力者であると信じさせるために詐術を用いた場合は、制限行為能力を理由として、この行為を取り消すことはできない。
5、制限行為能力者が被補助人であり、補助人の同意を得なければならない行為を被補助人が補助人の同意を得てした場合でも、相手方は、制限行為能力を理由として補助人の行為を取り消すことができる。



胡桃「これも条文レベルの簡単な問題だわ」
建太郎「うーん。ややこしくないか……」




胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「ええっと……。現存利益を返還するだけでいいのは、制限行為能力者だよな」

(取消しの効果)
第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

胡桃「そうよ。じゃあ、その相手方は、何を返還すればいいのかしら?」
建太郎「ええっと……。不当利得返還義務を負うということになるのか」
胡桃「そうよ。条文を確認してね」

(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

建太郎「えっ……ということは、相手方も善意ならば、現存利益だけ返還すればいいのか」
胡桃「それに対して、悪意の場合は、利息も付けなければならないことになるわ。ちなみに、問題文は何が間違っているかわかるかしら?」
建太郎「制限行為能力を理由とする取り消しであることを理由としている点だな。不当利得として返還するのが正しいと」
胡桃「そうよ。理解できたかしら?」
建太郎「OK。いきなりややこしい問題だったな」
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「未成年者に対して催告しても意味がないんだよな」

制限行為能力者の相手方の催告権)
第二十条 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

胡桃「そうね。催告するならば、法定代理人に対してするべきということね。ちなみに、次の条文も併せて確認しておいてね」

(意思表示の受領能力)
第九十八条の二 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。

建太郎「あっ。なるほど、未成年者の場合は、意思表示の受領能力も制限されているから、催告しても意味がないということになるわけだな」
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「条文そのままだな」

成年被後見人の法律行為)
第九条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

胡桃「4はどうかしら?」
建太郎「条文そのままだな」

制限行為能力者の詐術)
第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。


胡桃「5はどうかしら?」
建太郎「被補助人が補助人の同意を得てした場合は、完全に有効だよな。というか、この問題は、作成者が間違えているのか?」
胡桃「気づいたかしら? 補助人の行為となってしまっているから、意味の分からない問題になっているわけね。被補助人の行為とすべきだわね」
建太郎「いずれにしても、補助人の同意を得なければならない行為について同意を得ていれば、有効なんだよな」

(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

胡桃「そうよ。そして、制限能力を理由とする取り消しは、相手方にはできないというのも分かるわね」
建太郎「うん。取消権者は、制限されているんだよな」

(取消権者)
第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

胡桃「というわけで、答えはどれかしら?」
建太郎「4だな」








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