ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

民法1-16 時効 2011年問28 / 行政書士試験の勉強は、開業の準備をしてから始めよう

時効等に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし正しいものはどれか。

1、A所有の土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証だけでは足りず、Bの占有が、賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。
2、A所有の乙土地につき、Bが五年間、占有した後に、Cがこれを相続して、さらに、10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても、時効取得は認められない。
3、Aから丙土地を購入したBが、その引き渡しを受けてから、10年以上が経過した後に、隠れた瑕疵を発見し、Aに対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求をした場合、Aは、消滅時効を援用してこれを拒むことができる。
4、Aから甲建物を購入したBが、同建物の隠れた瑕疵を理由としてAに対して損害賠償を請求する場合は、瑕疵を発見してから1年以内にAに対して瑕疵の内容を具体的に明示しなくてもその存在を通知すれば、同請求権は、時効により消滅することはない。
5、乙建物について、先順位抵当権者Aの被担保債権につき、消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により、後順位抵当権者Bは、順位上昇の利益を享受できるため、Bもその時効を援用することができる。




建太郎「むむっ……。ちょっと難しくないか?」
胡桃「基本的な判例の知識を知っていれば解ける問題だわ」



胡桃「1はどうかしら?」
建太郎「いきなりお手上げ」
胡桃「まず、占有者は権利があって占有しているものと推定されるのは分かるわね」
建太郎「うん。次の条文だな」

(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

胡桃「だから、占有者には権利がないことを所有者の側で立証しなければならないのよ。ここまでいいかしら?」
建太郎「うん。OK」
胡桃「じゃあ、どういうことを立証したらいいのか。他主占有事情の立証だけでいいのか、他主占有権原に基づいて開始された旨も立証しなければならないのかという問題よ。どう考えるべきかしら?」
建太郎「他主占有事情というのは、賃貸借関係にあるという意味か?」
胡桃「簡単に言えばそうね。厳密には、外形的客観的に見て、占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情とされているわ。借りている場合なんかがそうね」
建太郎「借りている状態にあることが明らかであることと、占有開始時に賃貸借契約を結んだことの両方を立証しなければならないのかという話だな」
胡桃「そうよ」
建太郎「うーん。二つも立証する必要はないんじゃないかな。どちらか一方でも立証できればそれで十分だろ」
胡桃「そうね。判例もそう解しているわ」
建太郎「判例なんだな」
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「基本的な判例の知識を問う問題だな。まず、条文は次の通り」

(占有の承継)
第百八十七条 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
2 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

建太郎「2項に、前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。とある。ということはその反対解釈として、前の占有者の占有が善意無過失ならば、第百六十二条2項の要件を満たすということだよな」

(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

胡桃「その通りよ。判例もそう解釈しているわ」

胡桃「次に、3はどうかしら?」
建太郎「売主の瑕疵担保責任の問題だな。まず、条文は次の通り」

(売主の瑕疵担保責任
第五百七十条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第五百六十六条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

胡桃「問題は、売主の瑕疵担保責任はいつまで請求できるかということよ。条文では、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。とあるだけだわ」
建太郎「うん。判例によると、瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用がある。とされているんだよな。つまり、債権に準じて、10年の消滅時効にかかると」

(債権等の消滅時効
第百六十七条 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

胡桃「そうよ。基本的な判例だから押さえておいてね。4はどうかしら?」
建太郎「同じく瑕疵担保責任の問題だな。3項にある通り、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。とされている。この期間内に権利を行使すればいいわけだけど、売主に対して瑕疵担保責任を問う意思を明確に告げなければならないとされているよな」
胡桃「そうね。選択肢にあるように瑕疵の存在を通知するだけではだめだということね。5はどうかしら?」
建太郎「消滅時効を援用できる人は限られるという話だよな」
胡桃「どういうふうに限られるのかしら?」
建太郎「権利の消滅により、直接利益を受ける者に限定されるとするのが判例だよな。だから、選択肢の場合だと、乙建物の物上保証人とか債務者ということだよな」
胡桃「そうね。これも判例だから押さえておいてね。と言うわけで答えは?」
建太郎「3だな」










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