ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

民法1-18 物権変動 2005年問25 / 行政書士試験に合格できなければ公務員試験は無理!

不動産と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして正しいものはどれか。

1、Aの所有する甲土地につき、AがBに対して、売却した後、Bが甲土地をCに売却したが、未だに登記がAにある場合は、Bは、甲土地に対する所有権を喪失しているので、Aに対して移転登記を請求することはできない。
2、Aの所有する甲土地につき、AがBに売却した後、Aが重ねて甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるDに対して、登記をしていなくても、所有権の取得を対抗することができる。
3、Aの所有する甲土地について、AがBに売却し、Bは、その後10年以上にわたり、占有を継続して、現在に至っているが、Bが占有を開始してから、5年を経過した時に、Aが甲土地をCに売却した場合に、BはCに対して、登記をしなくては、時効による所有権の取得を対抗することができない。
4、Aの所有する甲土地につき、AがBに対して、売却したが、同売買契約が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、AはCに対して、Cの善意、悪意を問わず、登記をしなくては、所有権の復帰を対抗することはできない。
5、Aの所有する甲土地につき、AがBに対して、遺贈する旨の遺言を残して死亡したのち、Aの唯一の相続人であるCの債権者DがCを代位して、C名義の所有権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、BはDに対して、登記をしていなくても、遺贈による所有権取得を対抗することができる。



胡桃「これも判例の知識を問うだけの簡単な問題だわ」
建太郎「おう。基本的な判例だけだな」





胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「これができなければ、他人物売買ができなくなるよな。当然、間違いだ」

(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十条 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

胡桃「そうね。判例も、転売によって、自己の登記請求権を失うものではないとしているわ。2はどうかしら?」
建太郎「まず、Bは、背信的悪意者Cに対しては当然対抗できるよな。問題は、Cから買い受けたDだけど、彼も、悪意ということになっている。善意ならば、当然、対抗できないということになるけど、悪意の場合はどうかという問題だな」
胡桃「どう考えるべきかしら?」
建太郎「単なる悪意にすぎないときは、登記を先に備えた方が優先するということかな」
胡桃「そうね。判例も、『所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。』としているわ」
建太郎「うん。設問の場合で言えば、Dが背信的悪意者でなければ、所有権の取得を対抗できるということだな。善意の場合はもちろん、単なる悪意の場合でも同じだ」
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「ええっと……。10年以上にわたり、占有を継続して、現在に至っているということは、登記がなくても、Bは時効取得しているということか?」

(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

胡桃「売買契約によって占有を開始しているわけだから、占有開始時は善意だったということになるわね。だから、2項の規定によるわ。じゃあ、占有している最中に現れたCとはどういう関係になるかしら?」
建太郎「時効完成前の第三者ということになるわけか」
胡桃「どう考えれはいいか分かるわね?」
建太郎「時効完成前の第三者は、物権変動の当事者だから、彼に対して、時効取得を主張するのに登記を備えている必要はないと」
胡桃「その通りよ。4はどうかしら?」
建太郎「AとCは、解除後の第三者の関係になるんだよな。つまり、Bを起点にして、AとCに二重に売買されたのと同様の関係になるから、先に登記を備えた方が優先すると。Cの善意悪意は関係なかったな」
胡桃「その通りよ。次のような判例があるから確認しておいてね」

不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、たまたま右不動産に予告登記がなされていても、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。

胡桃「5はどうかしら?」
建太郎「うーん。お手上げ」
胡桃「まず、遺贈は、相続ではなくて、贈与契約だということね。ということは相続人に対しては、当事者の関係だから、受贈者は登記なくして対抗することができるけど、差押債権者Dとの関係では、対抗関係になるということよ」
建太郎「つまり、相続人であるCを起点にして、BとDに二重に売買されたのと同じ関係になると」
胡桃「そうよ。だから、先に登記を備えた方が優先するということね。次のような判例があるから確認しておいてね」

甲からその所有不動産の遺贈を受けた乙がその旨の所有権移転登記をしない間に、甲の相続人の一人である丙に対する債権者丁が、丙に代位して同人のために前記不動産につき相続による持分取得の登記をなし、ついでこれに対し強制競売の申立をなし、該申立が登記簿に記入された場合においては、丁は、民法第一七七条にいう第三者に該当する。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

胡桃「というわけで答えはどれかしら?」
建太郎「4だな」











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