ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

民法1-21 物権変動 2003年問28 / 行政書士試験に合格できなければ公務員試験は無理!

AはB所有の絵画を預かっている。最高裁判所判例によれば、次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1、Aがこの絵画を自分のものであると偽って、善意無過失のCに売却し、以後はCのために預かると約束した場合は、即時取得により、Cはその所有権を取得する。
2、Aがこの絵画を自分のものであると偽って、Cに売却し、後にBがこの売買契約を追認した場合でも、Cは契約の時に遡って、この絵画の所有権を取得することはできない。
3、Aがこの絵画を自分のものであると偽って、Cに売却した場合、Bにこの絵画を手放す意思がないため、Aがこの絵画の所有権を取得してCに移転させることができないときは、売買契約は無効である。
4、Bがこの絵画を第三者Dに売却した場合、Dは、売買契約の時に、この絵画の所有権を取得し、引き渡しを受けていなくても、Aに絵画の所有権を対抗することができる。
5、Aが代理権もないのに、Bの代理人だと偽って、この絵画をCに売却し、その後に、AがBを共同相続した場合、Cは、Aの相続分に相当する共有持分については、当然に権利を取得する。



胡桃「これは、基本的な判例を知っているかどうかだけの簡単な問題だわ」
建太郎「うん。そうだな」




胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「これは、占有改定によって、即時取得が成立するかどうかの問題だな」

(占有改定)
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

胡桃「どう考えるべきかしら?」
建太郎「占有改定では即時取得は成立しないとするのが判例だったな。Bからすれば、知らぬ間に、所有権が移ったことが、外観上認識しづらいわけだし」
胡桃「そうね。2はどうかしら?」
建太郎「無権代理行為の追認と同じ関係になるよな」

無権代理行為の追認)
第百十六条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

建太郎「もちろん、Aは、Bから代理権を与えられていたわけではないけど、ほぼ同じだから、第百十六条の規定を類推適用するとされている」
胡桃「そうね。3はどうかしら?」
建太郎「要するに他人物売買だということだよな。他人物売買で契約自体は有効だよな。ただ……」

(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十条 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

建太郎「売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。と。それができなければ、担保責任を負うことになる」

(他人の権利の売買における売主の担保責任)
第五百六十一条 前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。

胡桃「そうね。いずれにしても、売買は無効になるわけではなく、有効だということね。次、4はどうかしら?」
建太郎「動産の対抗要件は引き渡しだよな」

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件
第百七十八条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

建太郎「契約をしただけで引き渡しが為されていなければ、DはAに対して対抗することができない」
胡桃「うーん。これは間違いなのよね」
建太郎「えっ? どうして?」
胡桃「Bがこの絵画を第三者Dに売却した時点で、Dが所有者になっているのよね。そして、Dは、Bにこの絵画を預けているという関係にあるのよ。すると、どうなるかしら?」
建太郎「BはDとの寄託契約に基づいて、絵画を預かっていると」
胡桃「そうよ。そのため、次の判例の問題になるわけね」

動産の寄託をうけ一時これを保管しているにすぎない者は民法第一七八条の第三者に該当しない。

建太郎「この問題文だけで、そんなことまで読み取れなくない?」
胡桃「ちょっと不親切だわね。ただ、ほかの選択肢が間違いだから、消去法でこの選択肢が正しいと考えることになるのよ。とりあえず、5はどうかしら?」
建太郎「無権代理人が本人を相続した場合だな。無権代理人の単独相続ならば、当然に有効になるけど、共同相続の場合は、他の共同相続人全員の追認が必要になるんだよな」
胡桃「そうよ。次の判例ね」

無権代理人が本人を共同相続した場合には、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない。

胡桃「というわけで答えは?」
建太郎「4なんだな」










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