ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

民法1-23 物権変動 2011年問29 / 行政書士試験に合格できなければ公務員試験は無理!

A所有のカメラをBが、処分権限無しに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なく、Bから同カメラを買い受けた。
この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはいくつあるか。

1、CがAのカメラを即時取得するのは、Bの占有に公信力が認められるからであり、その結果、Bがカメラの所有者であったとして扱われるので、Cの所有権は、Bから承継取得したものである。
2、Cは、カメラの占有を平穏、公然、善意、無過失で始めた時に、カメラの所有権を即時取得するが、その要件として、平穏、公然、善意は推定されるのに対して、無過失は推定されないので、Cは無過失の占有であることを自ら立証しなければならない。
3、BはCにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思を表示し、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得により、カメラの所有権を取得するが、現実の引き渡しを受けるまでは、その所有権の取得は、確定的ではなく、後に現実の引き渡しを受けることによって、確定的に所有権を取得する。
4、Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して、以後、Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾した時は、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは、即時取得により、カメラの所有権を取得する。



胡桃「これも基本的な条文と判例の知識を問うだけの問題だわ」
建太郎「うん。そうだな」





胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「即時取得が原始取得か、承継取得かという問題だな」

即時取得
第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

胡桃「どう考えるべきかしら?」
建太郎「条文の文言にもあるように、即時取得は原始取得だな」
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「条文の知識を問う問題だな」

(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。

建太郎「占有者であれば、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定される。あとは、無過失だけど、これも……」

(占有物について行使する権利の適法の推定)
第百八十八条 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

建太郎「この条文によって、無過失も推定されるから、占有取得者が、立証すべきことはないということになる」
胡桃「そうね。常識だわ。3はどうかしら?」
建太郎「3は占有改定によって、所有権を取得するかどうかという問題だよな」

(占有改定)
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

胡桃「そうよ。基本だからもうわかっているわね」
建太郎「もちろん、占有改定によっては、所有権を取得しない」
胡桃「判例を確認しておくわよ」

占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第一九二条の適用はない。

胡桃「外観から、占有状態が変更したことが分からないから、即時取得は認められないということね。次、4はどうかしら?」
建太郎「指図による占有移転の例だな」

(指図による占有移転)
第百八十四条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

建太郎「指図による占有移転では承諾が必要だったけど、その承諾は、第三者がするとされている。設問で言えば、Cのことだな。預かっているDの承諾ではない」
胡桃「そうね。勘違いしやすいところだわ。で、問題は、指図による占有移転による即時取得が認められるかどうかだけど?」
建太郎「認められるな」
胡桃「判例を確認しておくわよ」

寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して右寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、民法一九二条の適用がある。

胡桃「というわけで答えは?」
建太郎「正しいのは4だけだから一つだな」









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