民法1-63 債権各論 2012年問34 / 宅建、行政書士、司法書士に独学で一発合格したいあなたへ!
不法行為に基づく損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らした正しいものはどれか。
1、Aの運転する自動車がAの前方不注意により、Bの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求する場合は、原則としてBの過失も考慮される。
2、Aの運転する自動車とBの運転する自動車がそれぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ、損害を生じさせた。CがBに対して、損害賠償債務の一部を免除しても原則としてAの損害賠償債務に影響はない。
3、A社の従業員BがA社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害のすべてを賠償した場合、A社はBに対し、事情のいかんにかかわらず、Cに賠償した全額を求償することができる。
4、Aの運転する自動車が見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道の列車と衝突し、Aが負傷して損害を生じた。この場合、線路は、土地工作物に当たらないから、AがB鉄道に対して土地工作物責任に基づく賠償請求をすることはできない。
5、Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度に関わりなく、また、症状について確実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、三年で消滅時効にかかる。
建太郎「うん。簡単だな」
胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「正しいな。被害者側の過失も考慮されるのは当然だよな。条文にある通りだ」
(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条 第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「正しいよな。共同不法行為による損害賠償債務は不真正連帯債務だから、不法行為者の一方について債務免除があっても、他方に対して影響を与えない」
胡桃「そうね。判例を確認しておくわよ」
甲乙が共同不法行為をした場合において、損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であるから、甲と被害者との間で訴訟上の和解が成立し、請求額の一部につき和解金が支払われるとともに、和解調書中に「被害者はその余の請求を放棄する」旨の条項が設けられ、被害者が甲に対し残債務を免除したと解し得るときでも、連帯債務における免除の絶対的効力を定めた民法四三七条の規定は適用されず、乙に対して当然に免除の効力が及ぶものではない。(最判平成10年9月10日)
胡桃「3はどうかしら?」
建太郎「これはおかしいな。A社はBを使用することで利益を得ているわけだけだし、事業の執行中の事故なら、A社二も責任があると言える」
胡桃「そうね。そこで判例は次のように判示しているわ」
使用者がその事業の執行につき被用者の惹起した自動車事故により損害を被つた場合において信義則上被用者に対し右損害の一部についてのみ賠償及び求償の請求が許されるにすぎない(最判昭和51年7月8日)
胡桃「4はどうかしら?」
建太郎「これもおかしいな。線路は、土地工作物にあたるから、設置に瑕疵があれば、土地工作物責任を負うことになると」
胡桃「そうね。判例も次のように述べているわ」
土地の工作物たる踏切道の軌道施設は、保安設備とあわせ一体としてこれを考察すべきであり、本来そなえるべき保安設備を欠く場合には、土地の工作物たる軌道施設の設置にかしがあるものとして、民法七一七条所定の帰責原因になる。(最判昭和46年4月23日)
胡桃「条文もチェックしておいてね」
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
胡桃「5はどうかしら?」
建太郎「間違いだな。三年の消滅時効の起算点は、損害及び加害者を知った時から三年だ。不法行為の時からじゃないよな」
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
胡桃「そうね。というわけで答えは?」
建太郎「1と2だな」
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