ライトノベルで学ぶ 行政書士試験過去問

行政書士試験の最重要過去問を日本一わかりやすく解説

民法1-19 物権変動 2008年問29 / 行政書士試験に合格できなければ公務員試験は無理!

ABが不動産取引を行ったところ、その後で、Cがこの不動産について、Bと新たな取引関係に入った。この場合のCの立場に関する次の記述のうち、判例に照らし妥当ではないものはどれか。

1、AからBに不動産の売却が行われ、BはさらにこれをCに転売したところ、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消した場合には、Cは、善意であれば、登記を備えなくても保護される。
2、AからBに不動産の売却が行われた後で、AがBの詐欺を理由に売買契約を取り消したにもかかわらず、Bがこの不動産をCに転売してしまった場合に、Cは善意であっても、登記を備えなければ、保護されない。
3、AからBに不動産の売却が行われ、BはさらにこれをCに転売したところ、Bに代金の不払いが生じたため、AはBに対し、相当期間を定めて、履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Cは、善意であれば、登記を備えなくても保護される。
4、AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金の不払いが生じたため、AはBに対して、相当の期間を定めて、履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場合に、Bから解除後にその不動産を買い受けたCは、善意であっても登記を備えなければ、保護されない。
5、AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売したところ、AB間の取引がABにより合意解除された場合には、Cは善意であっても登記を備えなければ、保護されない。



胡桃「これは、基本的な判例の知識を問うだけの問題だわ」
建太郎「うん。簡単だな」






胡桃「まず、1はどうかしら?」
建太郎「詐欺取り消し前の善意の第三者の問題だな。条文がそのまま適用される場面だ」

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

建太郎「3項にある通り、取消し前の第三者に対しては、売主は取消しを対抗することができないとされている。設問のケースでは、Cは、善意であれば、登記を備えなくても保護される。ということになる」
胡桃「2はどうかしら?」
建太郎「詐欺を理由に取り消した後で、転売しているということは、Bを起点にして、AとCに二重に売買されているも同然ということだから、177条の対抗関係になるな」

(不動産に関する物権の変動の対抗要件
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

建太郎「だから、先に登記を備えた方が優先するわけだ」
胡桃「そうね。3はどうかしら?」
建太郎「債務不履行を理由に契約解除した場合だな」

(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

建太郎「設問の場合は、契約解除前の第三者だから、第五百四十五条1項但書が適用されることになる。ただ、Cが第三者として保護されるためには、権利保護要件としての登記を備えていなければならないという話だった」
胡桃「そうね。4はどうかしら?」
建太郎「解除後の第三者との関係だな。この場合は、Bを起点にして、AとCに二重に売買されているも同然ということだから、177条の対抗関係になるな。だから、Cは、善意であっても登記を備えなければ、保護されない」
胡桃「5はどうかしら?」
建太郎「3の場合と同じだな。3のケースは、債務不履行を理由に契約解除した場合だけど、設問の場合は合意解除になっている。でも、結論は全く同じだと。つまり、第五百四十五条1項但書が適用されることになる。ただ、Cが第三者として保護されるためには、権利保護要件としての登記を備えていなければならないとされている」
胡桃「そうね。というわけで、答えは?」
建太郎「3だな」










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